VXX指数

VIX指数とは

前回、VXXのリターンについて、長い期間で見ると減価してしまうことの背景を解説しました。
また、VXXの理論上リターンについて、その内訳を数字でお見せしたわけですが、根拠がわからないと感覚も掴みにくいと思いますので、今回は少し計算をしてみたいと思います。
導出するのはVXX指数のリターンということになりますが、指数そのものではありません。
後日解説するであろうVIX指数とは異なり、VXXは指数の値そのものには意味はありません。
絶えず減価する仕組みが内在化されている以上、当然ですが、いつを起点にするかで数値は変わります。
なので、本項では、コンスタント・マチュリティ価格こそ用いるものの、一日のリターンにのみ着目してVXXのリターンを分解し、解説していきます。

用意するのは、2020-10-08と2020-10-09のVIX先物、10月限と11月限の清算値。
それから、その日のウェイトですね。

表1)VIX先物の値と合成先物を構成するウェイト

日付10月限の値11月限の値10月限のウェイト11月限のウェイト
2020-10-0828.12530.42536.00%64.00%
2020-10-0926.87529.02532.00%68.00%

表2)VXXのサイトから引っ張ってきた構成ウェイト

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

表1、2を見比べて、ウェイトがずれてるじゃないか、という指摘が来そうです。
iPathのサイトには、2020-10-08の引けベースで、VIX先物の10月限が32.00%、11月限が68.00%とあります。
ですが、これは翌営業日である2020-10-09をこのウェイトで迎えるという意味です。
VXXを正しく入れ替えているなら、表2の意味するところは、引け値で売買を行い、翌日のウェイトに合わせた、ということになります。

これらの情報を用いると、2020-10-09の合成先物価格としては、

26.875×32.00%+29.025×68.00%=28.337

同様に前日の2020-10-08の合成先物価格は、

28.125×36.00%+30.425×64.00%=29.597

となります。

よって、2020-10-09の1日のリターンは、

28.337÷29.597-1=-4.257%

前回はまるめて-4.26%としておりました。

あくまでもこれは合成先物のリターンですね。
実際にVXXの箱の中で同じものを作ろうとすると、第1限月を売って第2限月を買わないといけないわけです。
表1を見ても分かりますが、今サイクルだとウェイトにして4%分、日々ロールさせています。

この影響はどのように計算できるでしょうか。

ここで、前日のウェイトのまま放置したら、2020-10-09の先物価格はどうなっていたか、を考えてみます。
ウェイトが、36%と64%のまま先物の価格がそれぞれ動いた、ということです。
仮に「前日ウェイト合成先物価格」とでもしておきましょうか。

26.875×36.00%+29.025×64.00%=28.251

先程導出した2020-10-09の合成先物価格が28.337であるのに対し、「前日ウェイト合成先物価格」は28.251。
両者の差の0.0860は前日の合成先物価格の29.597に対しては、

0.0860÷29.597=0.291%

となります。
ウェイト変更をしなければ、合成先物とこれだけのリターン差が出てくるということになりますね。
しかしVXXは毎日合成先物と中身を同じくしていかないとなりません。
合成先物としての指数は、第1限月と第2限月の先物価格から、単にその日のウェイトを按分してやったものを数値として記せば良いだけですが、VXXは日々売買を行なってウェイトを合わせていかないとならないということです。
日々、この乖離を埋めるべく売買をしていることになりますが、これが合成先物のリターンとは別にカウントされ、VXXのリターンに反映されます。
これは売買手数料スリッページなどとは関係ありません。
VXXという商品がVIXの合成先物に近づける運用をする中で必ず発生するリターンということになります。

前回の形式で書くと、2020-10-09のVXXの理論上リターンの内訳は、

(VXXの理論上リターン)=(合成先物のリターン) + (1,2限月間の値の差によるリターン)
   -4.548%     =   -4.257%         -0.291%

となります。
無論、前回お話したとおり、第1限月の値が第2限月の値より大きいときは、この式の第2項はプラスとなるので、VXXのリターンは合成先物のリターンよりも正の方向にずれます。
ただ、そういう時期は限定的だ、ということです。
その背景の解説はまた別の機会に回すとして、今回はVXXの理論上のリターンの内訳についてお話しました。
まだ、VIX指数とは何か、についてはおろか、VIX先物とは何か、ということも解説していませんが、少なくともVXXはVIX指数とはだいぶ異なる性質のものだ、ということはおわかりいただけたのではないでしょうか。

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