さて、前回までにVXXは何からできているか、という点と、VIX指数は上下動しているだけなのにVXXは減価している、という点を確認しました。
どうもVXXにはVIX指数の動きとは別の何かがメカニズムとして働いていそうだ、というところで話を終えました。
その「何か」が知りたいところです。
その前に、VXXは日々何をしているのか、という点を見てみましょう。
VXXが日々行なっていることのなかに、そのメカニズムは埋め込まれているからです。
コンスタント・マチュリティ
すでに、VXXがVIX先物の期近の2つの限月からできていて、一日ごとにウェイトが少しずつ後ろにずれていく、というお話はしました。
こういう、次の限月の先物に乗り換える作業をロールオーバーといいます。
先物やオプションの投資家にとっては馴染みの深い言葉です。
それでも、機関投資家は別として、先物やオプションを扱う投資家でも毎日はロールしないですね。よほど神経質な人でも無い限り。
では、なぜVXXは日々ロールをしてウェイトを変えていく必要があるのでしょうか。
月次のサイクルで見ると、VXXの中のVIX先物の構成ウェイトは、
第1限月が100%
第2限月が0%
の日から始まり、最後に
第1限月が0%
第2限月が100%
となります。
その最後の日が第1限月の締め日ですね。同時に、これまでの第2限月を第1限月、第3限月を第2限月として見立てて、また、
第1限月が100%
第2限月が0%
からの再スタート、というわけです。
このウェイト変更によって、ちょうど一ヶ月先が締め日となるVIX先物の値を合成しているということになります。
一ヶ月の日数も月によって違いますし、次の締め日までの営業日数も20日だったり25日だったりまちまちなので、言い切ってしまうのは本当はよろしくないのですが、考え方としては、そうなります。
面倒なので、次の締め日までの営業日が20日のケースで説明すると、10日経った時点で、半々になりますね。
第1限月が50%
第2限月が50%
たとえばこんな日です。
この意味について、順を追って考えてみましょう。
7月限の締め日である2020-07-22と、8月限の締め日の2020-08-19。
その中間の日は2020-08-05です。
この日を、8月限と9月限半々で迎えると、8月限の締め日(2020-08-19)と9月限の締め日(2020-09-16)の中間(2020-09-01と2020-09-02)あたりが締め日となる合成先物を持ったことになります。
そのためには2020-08-05の前日の引け時点でこのポジションを採っておかないといけません。
それが、VXXが2020-08-04時点で、8月限と9限月で50%ずつ保有していた背景です。
ちなみに、2020-08-04の8月限の値は25.875、9月限の値は28.425でした。
この日の合成先物の値は27.15(=25.875/2+28.425/2)だったということになります。
毎日こういった作業を行なうことにより、VXXは、だいたい一ヶ月先を目処にしたVIX先物の合成ポジションを保有するのと同じ効果を持つ金融商品となります。
そしてこのように、保有する先物の合成上の締め日を一定に保つために少しずつロールオーバーすることをコンスタント・マチュリティといいます。
また、上記の例で言うところの27.15はコンスタント・マチュリティ価格ということになります。
次回は、この作業によりVXXに生じることについてです。
ようやく減価のメカニズムのお話に入ります。
コメント
[…] さて、前回は、VXXが日々行なっている先物の入れ替えについてその背景・理由についてお話しました。で、意図的に説明しなかったことがあります。 […]
[…] 次回はそのあたりを。 […]