VXXとは

VIX指数とは

このところ、VIX指数について、「指数自体の動きにはあまり意味は無く」とか、「崖を登るようなロール効果」とか、書いていますが、門外漢からしたらそれだけではよく分からないと思います。
理論的な背景を一切説明してこなかったので、無理もありません。
どこかでは解説しないといけないな、と思いつつ伸ばし伸ばしにしておりました。
そこで、何回かに分けてVIX指数とそれに付随する金融商品について、解説記事を書いていきます。

今回はまず、VXXについてです。
え?
VIX指数じゃなくて?
と思った方、至極まっとうな反応です。
でも、いろいろ考えた結果、説明の仕方としてはまずVXXから初めたほうが理解しやすいと考えました。
ETNとしてのVXXの解説からはじめて最後にVIX指数の作り方にたどり着く算段です。
全部で何回になるかわかりませんが、最後に振り返ってみて、ああ、そういうことか、と思ってもらえばこの試みは成功、ということで。

VXXとは何か?

VXXとは、イギリスの金融機関バークレイズが発行するETNです。

ETNとは「Exchange Traded Note」の略ですが、日本語だと上場投資証券と略されることが多いですね。
よく耳にするETF(Exchange Traded Fund)というのは上場投資信託ですが、その親戚と言って良いでしょう。
両者の違いは、ETFはその箱の中で実際に組み入れる株なり債券なりを購入するのに対し、ETNは必ずしもその必要はない、という点です。
そのETNを発行する金融機関が、このETNはこの指数・商品に連動しますよ、として決めた指数・商品の数値・値段に連動する証券を発行するだけで良いのです。
ETFとは違い、証券を発行するのに、それを裏付ける資産は特に必要ない、というわけですから、どんな発行体でも発行できる、というものではありません。
各証券取引所では、ETNの発行体についてその信用力をチェックした上でその上場・廃止の審査をしています。

このような違いはあるものの、我々エンド投資家としてはひとまず、VXXというのはETNで、それはなにかに連動した金融商品なんだな、という程度の理解でとどめておき、先に進んでみます。

では、VXXというETNは何と連動しているのでしょう。
VIX指数!
と思った方。残念ながら不正解です。

ここは、発行体のサイトを見てみるのが早いですね。

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

ここで「Index Components」というタブをクリックしてみましょう。

2020-10-05の引けベースでの連動は、

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

CBOE VIX Future NOV 10 56.00%
CBOE VIX Future OCT 10 44.00%

ということです。

裏付け資産があるか否かは別として、VIX先物の10月限が44%、11月限が56%
を組み入れたのと同じ状態ですよ、と言っています。
これらと連動させますよ、という意味ですね。

では、この組入比率はこれから先もずっと変わらないのでしょうか?
そんなことはありませんね。
少なくとも10月限は10月のどこかでは期日を迎えて消えますから。

少し日付をさかのぼってみましょう。

2020-10-02付は、

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

VIX先物の10月限が48%、11月限が52%
です。

2020-10-01付は、

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

VIX先物の10月限が52%、11月限が48%
です。

2020-09-30付は、

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

VIX先物の10月限が56%、11月限が44%
です。

2020-09-29付は、

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

VIX先物の10月限が60%、11月限が40%
です。

2020-09-28付は、

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

VIX先物の10月限が64%、11月限が36%
です。

2020-09-25付は、

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

VIX先物の10月限が68%、11月限が32%
です。

何となく、見えてきましたでしょうか。

おお!
4%ずつ動いている!

正解です。
正しくは、1営業日で4%ずつ、前の限月から後の限月へ、ウェイトが移動しています。

じゃあ、どんなときも1日4%ずつ動いているのか?

いいえ。
月によります。

月による?
とはどういうことでしょうか。
端的に言うと、限月間の営業日数が関係します。
逆に考えてみましょう。
1日4%だと、完全に入れ替わるまでに何日かかるでしょうか。
4%x25日=100%
ですね。

10月限は2020-10-21締め、11月限は2020-11-18締めです。
この間25営業日。
なので今は4%ずつ移動しています。

限月間の日数が違えば、この数字は変わってきます。
まあ、大体25日か20日が基本で、間に事前によくわかっている休場日があれば、その日数分マイナスされる、という形です。
「事前によくわかっている休場日」とは、元旦とか独立記念日とかそういう休場日です。
ブッシュさんの葬儀で急遽休みになった、とかいう日はマイナスされません。
このあたりは枝葉末節なので覚えなくて良いですが。

では、この締め日はどのように決まっているのか?
この点については、VIX先物がどのように作られているのか、という点に関わってきますので、また改めて解説します。

少し長くなったので今日はこのあたりで。
次回は、このウェイトの移動を前提とした投資の触りまで。

おまけ

バークレイズのサイトにある「Components」をよく見てください。
CBOE VIX Future NOV 10 52.00%
CBOE VIX Future OCT 10 48.00

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

OCT、NOVの後の「10」というのは、2020年のことでしょうが、表記としてはおかしいですよね。
バグだろうと思います。
多分、シンボルの下一桁しか読まないプログラムにしてるんじゃないかな。
もしくはシンボルの上書きができないDBを使ってるか。

もう2020年が限月の締め日となるようになって一年近く経ちますが治りません。
社内で誰か指摘しないんですかね。
一応、それまではどうなっていたかをお見せすると、

2019-11-18付

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

2019-11-19付

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

2019-11-20付

https://www.ipathetn.com/US/16/en/details.app?instrumentId=341408

ね。
バグでしょ?

一応擁護すると、先物のシンボル(取引所で使う記号)は西暦の下一桁しか使わないんです。
たとえば、今なら
2020年10月限のVIX先物は「VXV0」となりますが、2021年10月限(まだ発行されていませんが)は「VXV1」となります。
このルールでずっと進んできたとすると・・・?
はい。お気づきとは思いますが、2010年10月限も「VXV0」だったんですよ。
だからといって、現状取引されていない2010年の先物を組み入れているわけはないので、実務面では問題ないのでしょうが、先物のシンボルから自動的に中身を取得するプログラムを単純に下一桁だけ拾うプログラムにしておくと10年単位でバグります。
(実は自身のシステムで経験あり)

こういうところ、アングロサクソンはいい加減です。
日系の会社ではありえませんが。

昔、現地の会社に発注を流したとき、シンボルで「C」の銘柄を買う指示をだしたところ、当時はそれはCITIGROUPのことだったのですが、約定書にはCryslerと表記されていたことがあって慌てたことがありました。
約定されていた値から、これはすでに上場されていないCryslerと書いてあるがCITIのことだろう、と容易に推測ができたので、直しておいてね、で済みましたが。

そういうところ、ほんといい加減。

あと、最近は減りましたが、この「Components」欄、たまに空白の一日が出来ることがあります。
大体欧州時間には前日のComponentsがアップされるのですが、
数時間おきとかにチェックしても、前日分が出てこないことがある。
で、気づくとその翌日分の数字になってたりして、何かやましいことがあったのかな?
と勘ぐりたくなってりして。
ま、担当者が休みだった、とかそういう他愛のない理由かもしれませんが。

次回

コメント

  1. […] さて、前回はVXXの中身について考えてみました。 […]

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